2006年度模擬裁判
判決
下された判断は・・・『原告敗訴』
判決文
おおまかに言えば、
一 1 賃借人の特約違反が契約解除理由となるのは、特約に違反することによっ て貸借契約の基礎となる賃貸人・賃借人間の信頼関係が破壊されるからで あると考えられ、今回の加奈の一時的な居住の不通知は信頼関係破壊には 至らないと判断
2 宗教団体ハーレムの活動については、加奈がなんらかの関係があるとは認 めることはできる。しかしながら、宗教活動に多大な時間を割く余裕があ ったとは考えにくいことからも、加奈が宗教団体ハーレムを主催しており 、実際に活動を行い、本件建物内で収益を得ていたことを示す証拠という には足りない。宗教団体ハーレムと被告加奈の具体的な関係が明らかでな い以上、宗教団体ハーレムの行動の責を被告加奈に問えず、信頼関係の非 破壊を覆す特段の事情があるとは認められない。
⇒ 主意的請求である契約の解除に基づく建物を引渡し請求は棄却。
二 1(1)原告後藤は本件建物を建て替えて居住し、うつ病からの回復をはかる 意向であることが認められ、原告の自己使用の必要性は肯定すること ができる。
(2)本件建物は、築後50年を経過した木造建築で、老朽化も見られること から、原告の計画するように新たに建物を建築することは妥当性があ るともいえる。
(3)しかしながら、原告のうつ病は、夫の家庭内暴力を原因とするもので あり、現実に、本件建物のある土地に居住せずに、うつ病の病状が多 少の改善を見せた実績がある。また、うつ病の治療法には様々な手法 があることから、原告がうつ病からの回復をはかるために居住する場 所が、どうしても本件土地でなければならないとまで認めるべき事情 は窺えず、原告の本件土地使用の必要性はそれほど強いものであると は認め難い。
2(1)他方、被告らは、重度の糖尿病、糖尿病性網膜病、軽度の認知症を併 発し、住環境の変化が生命の危険にまで及びかねない状態。したがっ て、被告らにとって、本件家屋から移動せずに、このまま訴外タマの 介護及び治療を続けていくことが不可欠であり、被告の本件建物の自 己使用の必要性は、切実なものであって、転居はほぼ不可能。
(2)本件建物の老朽化についても、経年変化が著しいものの、修繕を加え ながら使用すれば相当期間、現在同様に使用しうる程度のもの。
3 以上、双方の事情を比較考慮すると、被告らの転居による訴外タマへの 影響が、生命の危険にまで及びかねないことから、本件建物についての 被告らの必要性は原告のそれをはるかに上回って切実。本件建物をただ ちに取り壊さねばならない必要性も認められない。
被告がこの段階で本件建物から使用できなくなることに対する金銭的保障をもってしても、本件建物の老朽化及び原告の必要性を総合して、被告の必要性を上回るものと認定することは出来ない。
⇒ 予備的請求である解約申入れによる建物を明渡し請求も棄却
三 なお、加奈についてだが、認定事実により、被告加奈の本件建物の占有は、契約者家族の居住目的による本件建物使用であって、本件賃貸借契約特約によって認められるもの。そうすると、本件賃貸借契約が有効である以上、被告加奈の占有も、権原のある占有であるというべき。
したがって、被告加奈に対する所有権に基づく本件建物明渡請求も失当。
こうして、早稲田地方裁判所での戦いは終わった・・・
しかし、原告側はまだまだ不満があるようで、控訴する構えを見せている。
当然、被告側もこれに応訴するであろう。さらに、宗教団体ハーレムの件で、刑事告発も視野に入れているとの情報もある。
本当の結末は、あなたの想像に委ねて・・・
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