2006年度模擬裁判
これは、西早稲田で起きた出来事である。
会社員である池田将人は祖母タマと西早稲田の借家に住んでいた。祖母は糖尿病に患っており、将人が看病しつつ、近くの犬塚クリニックに通い自宅療養をしていた。
ところが、将人が同僚の産休により、一時的な異動を命じられた。異動先は、業務が深夜にまで及ぶ部署であった。このままでは今までのような介護を続けるのは困難だ…。
そこで、将人は群馬にいた妹カナを東京に呼び、異動先から戻るまで祖母の看病を頼み、自分は別のマンションを借りることにした。
さて、将人にもともとの家を貸していたのが、将人や祖母とも顔見知りであった後藤だった。彼女は西早稲田近辺にいくつかの不動産を所有していた地主でもあった。そんななか、西早稲田付近に東都メトロ新目白線の新早稲田駅が開通することが発表された。西早稲田にも再開発の波が押し寄せ、古い一戸建ての住宅のマンションへの建て替えが進んでいった。実際、後藤のところにもいくつかマンション建設の話がきていた。当然この話に乗らない手はない。
だが、将人の借家の土地がネックになっていた。しかも、祖母のことを考えると、素直に家を出て行くはずもない…
そこで…
後藤はこのことを、なにかと世話になっていた(株)西早稲田不動産のカライスコスに相談した。 カライスコスは、将人の妹のカナが住んでいて将人が別居していることに目をつけた。
賃貸契約書には、「 第8条(賃貸借物件の使用目的) 乙は賃貸借物件の頭書記載の住人欄に記載された乙とその家族の居住以外の目的に使用してはならない。」
「第9条(譲渡・転貸の禁止)乙は理由の如何にかかわらず賃借権を他人に譲渡し、あるいは賃貸借物件の全部又は一部を第三者に転貸(同居・共同使用・その他これに準ずる一切の行為を含む)してはならない。」
とあったのだ。
契約時には、同居人は祖母のみということになっていた。
これなら、「14条(契約の解除) 次の場合、甲は何らの通知、催告をしないで、直ちに本契約を解除することができる。 (中略) 6
その他本契約に違反したとき。」
という条文を利用できる。
さらに、その家が非常に築50年と老朽化が進んでいることや、周辺物件の賃料と釣合いがとれていないことで、
「 第13条(解約希望の申入れ) 2 賃貸借契約中であっても次の場合本契約は終了する。 イ
甲が乙に対し正当な理由に基づく解約の申入れ(更新しない旨の申入れを含む以下同様)をした後、6ヶ月を経過したとき。但し、甲の申入れにより乙がその期間前に退去したときは、その時において本契約は終了する。
という条文も利用できる。
そこで入れ知恵された後藤はこれらを根拠に、立ち退き料1830万と引き換えに立ち退きを迫った。
しかし、交渉は決裂、業を煮やした後藤は弁護士の寒河江、高橋、木岡を通じて、将人、妹カナに対して建物明け渡しの通告をした。
将人、加奈も黙っているはずもなく、こちらも弁護士の井上、岩崎、矢島、塚本を通じてこれを拒否した。
こうして、後藤は、将人と加奈を被告として、建物明け渡し請求の訴えを早稲田地方裁判所に提起したのだ・・・
訴状(リンク)
答弁書(リンク)
いよいよ、訴訟へと発展した、この事件の行方は!?
(続く)
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